2025年1月6日月曜日

19世紀末の園芸施設:27. 塗料

   体に悪い鉛白から体に良さそうな亜麻仁油まで、いろいろな材料を使って温室に塗装がされていたことを知りました。今も温室の部材の維持管理は大切ですが、それよりずっと手入れの手間がかかってそう。


HORTICULTURAL BUILDINGS.  By F. A. FAWKES. (1881)

塗料

木材」に関する記事と「鉄骨ハウスと木骨ハウス」の項で、木材が使用に適した状態にあり、必要な加工を施したなら、何らかの不浸透性の物質でコーティングして湿気の害から守る必要があると述べました。このために使用される最も一般的な物質は「塗料」です。

塗料は粘液質で空気にさらされると硬くなる性質をもちます。
すべての塗料の主成分は鉛白ですが、これは一般に鉛の水和酸化物である炭酸鉛です。
亜鉛白は淡色に使用される別種の金属塗料ですが、鉛白よりも粘り気が弱いです。

塗料にはいくつかの調合物が加えられています。
Carson の防錆塗料には、(顔料を除く)ベース材料として、すりつぶしたガラス瓶、鉛精錬から得られるスラグのスコリア、あるいは焼いたカキ殻が使用されています。

ほかにも鉄酸化物塗料、鉄珪酸塩塗料などなどがあります。


塗布にあたって最適な媒体は良質の亜麻仁油です。
屋外の塗装では、テレピン油はこの油より水に弱いため、できるだけ使用しないでください。

ただし、白色にする必要があり、鉛白を使用する場合は少量の植物性黒鉛を加えることがよくあります。
黒鉛を入れるのは奇妙に思えるかもしれませんが、これにより鉛白と油の塗料が変色するのを防ぎます。

少量の乾燥剤(酸化鉛)は塗料をより硬く、より速く乾燥させます。

油材をテレピン油に変えた塗装(通常は室内の仕上げ塗装にのみ使用する。)は、「平滑化」作業と言われます。
このような平らに滑らかになった表面では光は不規則に反射します。


木材を十分に乾燥させて、完全に乾くまでは塗料を塗ってはいけません。

木材は必要な形に仕上げたら、すぐに節どめ、下塗りをして、隙間を塞ぎます。

「節どめ」は、赤鉛と接着剤を同量の水と混ぜた混合物を熱いうちに塗布して節目を塞ぐ作業です。すぐに使える状態になっている「節どめ材」と呼ばれる製品を使用することもあります。

「下塗り」は、鉛白と少量の赤鉛に亜麻仁油を混ぜたもので薄く塗ることです。

隙間を塞いだ後、すなわちパテで欠けや穴を補修した後、さらに濃い色で下塗りします。その後、加工・塗装した木材を固定すればガラスを張る準備が完了です。

工場で加工された木材は、下塗りをせずに目的地に送ってはいけません。

雨に当たらなくても、湿気は木材の表面で凝縮し木の組織に入り込みます。そこで塗装されれば、水は閉じ込められ蒸発も妨げられるので、最終的に木材を腐らせ破壊してしまいます。

いずれにしても、木板の底面やレンガ造りに取り付ける木工品のレンガとの接触面は、取り付ける前に十分塗装する必要があります。
ガラスをはめ込んだ後、良質の油性の着色塗料を 2 度塗りします。
最後の塗りには、煮沸した亜麻仁油と煮沸していない亜麻仁油をほぼ同量混ぜたものを使ってもよいでしょう。

園芸向けに最適な仕上げの色はストーンカラー(石のような色)と白色です。

木目調のペイントやステイン、ニスを塗るのは、園芸上の見た目としては好ましくありませんが、花室や廊下において建築上望まれるなら、そういった塗装がされる場合もあります。実際、花室や廊下では植物は建築の添え物的なものだからです。

室内の木材は、つや消し塗装すると非常に見栄えがよい場合があります。特に、植物や花は、光沢のある塗装ではなく、光を吸収せず反射するような塗装の木材や骨組みが近くにある方が見栄えがすると考えられてます。ただし、塗装は湿気のある室内環境には適していないことを常に念頭に置いておく必要があります。

コンサバトリーにおいてマリオン(方立)やサッシ、鉄細工の装飾品が明るい青やチョコレート色で強調されているのを見るのは珍しいことではありませんが、これは明らかに残念なことで、構造(建物)ではなく中身(植物)を目立たせるべきであるという前提が忘れられています。

しかし、醜悪な趣味が存在する限り、明るい色の着色ガラスや青色やチョコレート色の塗装、その他の突飛な手段によって植物や花が台無しにされるのをコンサバトリーで目にする事例はなくならないでしょう。

園芸ハウスを定期的に塗装することは必要不可欠です。
園芸用の建物を取り巻く非常に厳しい気象条件から建築材料を保護することが真の節約となります。
建設時に 3 層から 5 層で塗装した場合は、屋外側は最低1年に1回 1層塗装(1回塗り)し、その後は 3 年ごとに屋外も屋内も 2層塗装(2回塗り)します。

新しいガラス板をはめ込むときは必ず、古いガラスを取り除いた後の木工部分とパテは、次の定期的な塗装まで放置せず、新しいガラス板をはめ込んだらすぐに塗装しなければなりません。
温水パイプは通常の方法で塗装できます。また、油性塗料が加熱されて乾燥していく際の匂いがしばらく残りますが、温室では住宅ほどの不快感は感じないでしょう。

パイプに光沢を持たせたい場合、ブランズウィックブラックと呼ばれる高価なワニス塗料が効果的です。または、煮沸した良質の油とごく少量の乾燥剤を混ぜた植物性の黒塗料を使用することもできます。
いずれにしても、臭いはそれほど長くは続かないと思われます。
臭いを完全に避ける必要があり、色がくすんでいても問題がない場合は、塗料から油を省いた顔料とターペン(テレピン油)を使用するか、またはパイプにジステンパー(水性塗料、例えば粉末状のチョーク (炭酸カルシウム) とウサギの皮の接着剤などのサイズ (ゼラチン) から作られる。)を塗布することができます。あるいは、パイプに黒鉛を塗ってもよいです。

ただし、この方法は必ずしも満足できるものではありません。かん水中に表面が濡れてしまった場合、パイプに再度黒鉛を塗らなければならないからです。

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