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2025年12月27日土曜日

[近況] ”自然に還る”のキッチンガーデン:小寒・大寒に備えて

12月25日は、雨が降ってからドーンと寒くなりました。北国の人にはまだまだ空気が温かいと言われそうですが、九州人には十分寒いです。雨だったせいかクリスマスだったせいか、バスが30分以上遅延してバス停で凍死するかと思いました(大袈裟😅)。

5年前に作った木枠が痛んできたので、小寒・大寒に備えて屋根付きの新しいコールドフレームを作りました。 

何の処理もしていない杉板だったのでボロボロになりました。ある意味、自然に還っとります。今はネギと小カブ苗を植えています。

両屋根のNewバージョンが待機中。

苗はこれから。冬はゆっくりとしか成長しないので、コールドフレームへの植え替えはいつになることやら(笑)

10月13日にタネまきしたミニセロリ。寒いので成長の遅いこと。

発芽待ちのタネ。

25℃にセットした保温器に入れました。古いタネなので発芽してくれるだけでうれしいな。


何でも値上がりして生きづらさは増すばかりですが、来年なんとか良い年になるといいですね。


2025年12月13日土曜日

19世紀末の園芸施設:40. 様々な暖房方法 III-7 低圧(常圧)温水暖房 −バルブ(弁)と管の接合−

   商業温室で温湯暖房は見かけなくなっていますが、高級メロンハウスなどでは今も利用されています。温湯はじんわり均一に暖房できるところがきっと魅力なんでしょうね。

HORTICULTURAL BUILDINGS.  By F. A. FAWKES. (1881)

様々な暖房方法 Ⅲ 

低圧(常圧)温水暖房


バルブ(弁)

熱を供給する主管は熱を調節したり止めたりするバルブと密に繋がっています。

表XXIIIで示したように、温水パイプ内の熱を持続的に供給するには、温水が一定の速度で流れている必要があります。

さて、ここでボイラーの火を弱めると、ボイラーからパイプへ流れ出す水(流出水)の温度は流入水(戻り水)の温度に近づくようになり、流れる速度が低下します。そして、温度差がある限度に達すると、熱を持続的に供給するのに十分な速度が得られなくなります。

したがって、小型の暖房システムすなわち1つのハウスあるいは1つの配管系を暖めるシステムでは、火力を増減させることで供給する熱を自由に調節したり停止したりすることができます。

しかし、ほとんどの場合は1つの熱源で複数のハウス区画あるいは複数の配管系を動かすことが多いです。

したがって、1つ以上、複数の配管系列の循環を遮断したり、残りの配管系列の循環を妨げずにある系列を停止したりする機能が必要になります。

これを実現するために、チェックバルブまたはスロットルバルブを使用します。
こういったバルブは、概ね図86と似た構造をしており、絞り通気バルブと同様に平衡状態にあるため、水の動きによってバルブが閉じたり開いたりといったことはありません。

バルブが完全に開いていれば、スロットルバルブのディスクの端以外、温水は循環することができます。バルブを閉じれば温水の循環は完全に止まります。

この種のバルブは開いている時、他のバルブよりも水の循環を邪魔しません。

バルブが単に循環を停止させる目的だけなら、流出管にバルブがひとつあればよく、戻り管にバルブを設置する必要はないでしょう。ボイラーが非常に強力に運転でき、配管がそれに適した配管になっている場合、流出管にのみバルブを設置すれば、水の循環を妨げるよりむしろ流れを迂回させるといった効果的な使い方ができるでしょう。

一般的には、バルブは流出管と戻り管の両方に設置するべきです。

図95に示すように、主管の長さ方向の中央から分岐して立ち上げる主管の一部または全部にバルブを設置することができます。

通常のスロットルバルブは循環を妨げますが、水圧抵抗は生じません。

例えば、運転中のボイラーと予備のボイラーの間、運転中の2つのボイラー間、あるいは大規模で複雑な配管系の特定箇所などでは、高圧バルブが必要となることがよくあります。

使用する高圧バルブは、通常の「ねじ込み式バルブ」のように迂回した流路を作るものではなく、開弁時に完全に、直接、明確に流路となるタイプを使用してください。

以下の図96のバルブはこの条件を満たしています。


図96. 高圧ストレート全開バルブの断面図 (デニス社特許)


このバルブを閉じると、2枚のディスクが機械的にねじ込まれることによって弁座に押し付けられ、あらゆる圧力に対抗します。
バルブを開くと、ディスクは弁座からわずかに後退し、流路部から完全に出ます。

この図はねじ込み式のバルブ弁を示していますが、この原理はスピゴットソケット(蛇口弁と受け口)式またはフランジ式のバルブにも同様に適用されています。

図97は一般的なスロットルバルブを示しています。高圧バルブを流出管に、スロットルバルブを戻り管に設置することが推奨される場合もありますが、そのような組み合わせに利点はありません。

高圧バルブを使用する場合は、当然のことながら、流出管と戻り管の両方を高圧バルブにする必要があります。

バルブのパイプへの取り付けにおいて、注意すべき点が1つあります。


図97.—スロットルバルブ

195ページの図95を参照すると、鉛直の立ち上がった主管は区画Cで途切れ、ハウスDには通っていないことがわかります。区画Cの一端の両側にある放熱パイプは、そのままハウスDまで通っています。配管が区画Dに入る箇所には、図98に示すように、H部にバルブが取り付けられています。


図98.—Hパイプとバルブ

ハウスDを加温する必要がある場合、H部の中央にあるバルブを閉じ、他の2つのバルブを開きます。ハウスDへの熱供給を停止する場合は中央のバルブを開き、他の2つのバルブを閉じます。このシステムの明確な欠点は、Cが加熱されない限り、ハウスDを加温できないことです。


接合部

園芸用の温湯暖房に最も一般的なパイプには蛇口栓と受け口が端についています。

末端がフランジのパイプもありますが、非常に稀です。

末端がフランジのパイプでは、フランジの隙間に水密性の高い接合部ができるように、加硫ゴム製のワッシャーをかませてフランジをボルトで締め付けます。

蛇口栓と受け口を端に持つパイプの接合には以下のような方法があります。

一つは錆止め接合です。

これは、蛇口と受け口の間をロープでコーキングし、湿らせた鉄粉と塩化アンモニウムの錆止め混合物で気密にシールするものです。

この接合は一度作ると、パイプを壊さずに取り外すことはほとんど不可能です。

もう一つの接合方法は赤鉛と白鉛の混合物でロープを使ってパイプをコーキングする方法です。

もう一つはロープでポルトランドセメントをコーキングする方法です。

しかし、最も簡単で、漏水に最も強く、そして最も簡単に外せる接合は円形の加硫ゴムリングを利用するものです。

この接合方法は、リングを蛇口栓の先に置き、受け口または接合口に押し込むだけです。

リングは受け口の端と蛇口栓の端のほぼ中間に位置し、水がパイプ内を循環すると平らな楕円形に丸まります。(図99参照)


図99. 加硫ゴムリング接合部の断面図
A リング挿入前、B リングを受け口と蛇口栓の間に挿入後

短時間で、熱によってリングの外側がパイプに密着し、接合部は特に障害物がなければ長年良好な状態を保ちます。

数分もあれば、新しいリングを挿入することでこのように接合部を修理できますし、接合部を分解してパイプを別の用途に使用することもできます。もちろん、加硫ゴムリングはボイラーに最も近い接合部には使用しないでください。

加硫ゴムリングで接合した装置はリングを挿入した直後から始動できますが、パイプに水を満たす前に、錆び止めやセメントの接合が硬化・乾燥していることを確認する必要があります。

加硫ゴムリングはパイプの膨張・収縮に対応するので、他の接合で発生しがちな漏水の危険性はそれほど高くありません。

前述のように(「鉄骨ハウスと木骨ハウス」51ページ参照)、鋳鉄は温度が32°Fから212°Fに上がると1/889膨張します。つまり100フィートあたり約1.35インチ伸びます。

したがって、特に接合固定するパイプは線膨張しやすいようにしておく必要があります。そうしないと、接合部が漏水しやすくなります。

接合した2つのパイプの温度が異なる場合、流出水側の膨張と戻り水側の膨張が異なります。

給湯技術者の中には独自の接合方法を使い、そのため、パイプを特殊な端部形状にすることがあります。

こういった特殊な接合方法は、後から変更や増築を行う際に同じ形状のパイプを入手することが困難になる可能性や、加硫ゴムリング付きのソケットと蛇口栓付きのパイプに比べて利点が極めて限定的なことから、実用的であるとは言えません。


2025年11月22日土曜日

19世紀末の園芸施設:40. 様々な暖房方法 III-6 低圧(常圧)温水暖房 −空気管と主管−

  温水暖房システムの配管系のうち、空気の排気口とメインの給水管(主管)についての説明です。これまでの温水暖房システムの詳しい解説は、風呂の残り湯のようなぬるい温水でトンネル内を暖めるような場合も有用かも。私には勉強になっています。

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様々な暖房方法 Ⅲ 

低圧(常圧)温水暖房

空気管

水が適切に循環するためには、配管とボイラーが完全に水で満たされている必要があります。この点は温水暖房ではとても重要です。

配管内に空気が少しでも残っていると、固形の障害物があるのと同様に循環を阻害します。

そのため、発生する空気や蒸気を逃がすために配管の最も高い位置に排気口を設ける必要があるのです。

一つの温水システムに複数の配管列がある場合は、各配管列の最も高い位置に排気口を設けなければいけません。

あるいは、配管列に上昇部分と窪みが複数箇所にある場合は上昇する各部分の最高点に空気の出口(排気口)を設ける必要があります。

空気は水の827分の1の軽さなので、水にのって動く空気は下に移動することは決してありませ。

これらの空気の出口は通常、必要箇所に細い金属管を挿入することで作られます。あるいは、金属管を取りつけにくい場合は配管パイプの上部に小さな蛇口を取り付けることもできます。

蛇口は当然ながら開栓しているときのみ作動するので、少なくとも1日に2回開閉を確かめる必要があります。

細い金属の空気管を取り付けた場合は、自動で作動するように、装置類の上部からさらに約8~9フィートの高さにまで立ち上げて、その先端を図92のEのように折り返して、何も入らないようにします。

この先端部はハウスの外へ導いて、排水溝や排水口へ向けることもあります。

空気管は装置から8~9フィート(約2.4~2.7メートル)の高さでしっかりと垂直に設置されているか、細心の注意を払う必要があります。垂直でないと、管内を上昇した水が滞る部分ができて外気にさらされると凍結する危険があります。

長い空気管を設けることができない場合あるいは空気管内の水が凍結する危険がある場合には、短い管と蛇口、あるいは蛇口を直付けします。ただし、可能な限り、自動で作動する金属管の方が望ましいです。

空気管の直径は非常に小さくて構いません。なぜなら、等圧下では流体(空気も水も流体)の速度はその比重に反比例するからです。すなわち、空気は水の827倍の速度で管から逃げることになります。


主管

暖房する放熱パイプをボイラーに直接接続することは不便ですし、不可能です。放熱パイプは2本の主管すなわち供給管でボイラーと接続するのが一般的です。2本のうち1本はボイラーの最上部に取り付けて、(「行き」の)上昇水を流します。もう1本はボイラーの最下部に取り付けて、ボイラーへ流入する(「戻り」の)下降水用とします。

当然のことながら、主管からは熱が放出されないようにすることが不可欠です。そうしないと、ボイラーとパイプの放熱面との間の適切な熱伝達が減ってしまいます。

この問題を回避するために、地下に埋設されている主管は通常、レンガの溝に入れ、フェルトなどの熱伝導率の低い素材で覆うか、あるいは、静止した空気層に置くのが望ましい方法です。静止空気は熱伝導率が最も低いものの一つで断熱層になります。

レンガも熱伝導率が低いため、ボイラーと放熱パイプの接続部の間の主管はレンガで覆った中空の溝に入れるだけでも熱の損失を減らすことができます。

このように空気で断熱された主管内を温水が流れ始めると、表面から熱が放射され、中空の空気層と周囲のレンガが温められますが、主管、空気層、レンガの温度が等しくなれば放射はほぼなくなります。

主管をレンガの溝に設けることができない地下室などの開放空間に設置する場合は、当然のことながら、フェルト、ケイ酸塩綿、またはその他、熱伝導率の低い素材で断熱する必要があります。

放熱パイプにおいて説明した管内の摩擦や持続的な温度上昇は、主管にも当てはまります。ただし、通常、放熱パイプは主管よりも径が細いので、放熱パイプの摩擦のほうが深刻です。

摩擦損失に関して、垂直の主管は水平に近いものほど太くする必要はありません。

水平に近い主管は、可能であれば、9フィート(2.7 m)ごとに少なくとも1/2インチ(12.5 mm)の勾配をつける必要があります。

主管の直径は通常2インチまたは3インチ(5〜7.5 cm)ですが、ボイラーと放熱パイプの間の距離と垂直の高低差、そして放熱パイプへの給水量に応じて決定されます。しかし、距離が非常に長く放熱面積が大きい場合は、4インチ(あるいはそれ以上)の径の主管が必要になる場合があり、摩擦損失を補うために垂直部の高さをどのようにとるか、細心の注意を払う必要があります。

図95.給湯本管(主管)と放熱パイプの配置図

 主管はボイラーと放熱パイプを繋ぐ接続としての役目のほか、出入口のドアの下に配管が敷設されないようにし、隣接するハウス、さらには1つのハウス内の異なる場所に別々にかつ独立して暖房できるようにするためのものです。

一例として図95は4棟の両屋根ハウスにおける主管の配置を示しています。

Aは植物用暖房ハウスを想定しています。
Bはキュウリとメロン用のハウス、
Cはグリーンハウス、
Dは果樹用ハウスで、

すべて暖房されています。

ボイラーはXの位置にあります。

ハウスの両妻面と各区画にドアがあり、さらにグリーンハウスCには横向きのドアが2つあります。

ハウス内の点線は主管、太線は放熱パイプです。

主管はボイラーから直接伸びて、通路の中央をまっすぐに伸びていることがわかります。

ハウスAでは、主管からの枝分かれが展示台下の暖房パイプに繋がっていて温水を供給します。

さらに枝分かれがハウスBの床下暖房と外気暖房に繋がっていて温水を供給します。

ハウスCでは、両側面にある横向きの出入り口に暖房パイプに温水を供給するための枝分かれが繋がっているので、下を掘る必要はありません。

ハウスDの暖房については後述しますので、ここでは説明しません。

この図は必ずしも主管の模範的な配置を示すものではなく、さまざまな配置方法の1例を示しています。

上記の主管の配置から、ハウスAとBの暖房を完全に遮断しながら、ハウスCまたはその一部を暖房できること、ハウスAとCの暖房を遮断しながらハウスBを暖房できること、ハウスBの上部または下部の暖房を、他の暖房と干渉することなく遮断できることが分かります。実際、ハウスのどちらか一方、あるいはハウスの一部、あるいはハウスA、B、Cの任意の組み合わせで、残りの部分とは全く独立して暖房することができるようになっています。

ボイラーとその位置については後述しますが、ボイラーの位置と給水主管との関係についてここで言及しておくべきことは、複数のハウスを連ねる暖房計画においては、図95のZのように、ボイラーを連棟の中央付近に配置することが望ましい場合が多いということです。

この配置により、給水主管をボイラーの両側からのばすことができ、水は一方向ではなく双方向で循環します。

主管が輻射による熱損失を十分に防がれている限り、最も多くの熱量を必要とするハウスをボイラーの最も近くに配置する必要性はそれほど高くありません。

このことは、「輻射面」の項で後述するように、他の条件が同じであれば、輻射面の大きさに依存するからです。

1台のボイラーで複数のハウスを暖房する必要がある場合、循環流の摩擦損失を減らすため、ボイラーに接続する主管のサイズを大きくすることがしばしば望ましいとされています。

主管(実際は温水装置のすべての部品)は簡単に手が届くような位置に設け、溝に置かれることで蓄積した汚れなどを容易に除去できるようにしておく必要があります。 



2025年11月8日土曜日

19世紀末の園芸施設:40. 様々な暖房方法 III-5 低圧(常圧)温水暖房 −膨張タンクと給水槽−

 温水暖房システムで不可欠な膨張タンクとシステムへの給水についての説明です。

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様々な暖房方法 Ⅲ 

低圧(常圧)温水暖房

膨張タンクと給水槽

表XIXに示されているように、約40 °F (4.4 ℃)の水1ガロン (4.55 ℓ) は、212 °F (100 ℃) に加熱されると1.04333ガロンになります。つまり約1/23 (4.3 %) 以上膨張します。

したがって、配管系内のパイプに40 °F (4.4 ℃)の水を満たし、その水温を 212 °F (100 ℃) まで上げたと仮定すると、パイプ内の水は1/23 (4.3 %) 膨張するので、これをオーバーフローさせる必要があります。 

なお、パイプ内の水温は決して 212 °F (100 ℃) に達することはなく、実際には 200 °F (93 ℃) までにしかなりません。また、加熱前の水温は通常 40 °F (4.4 ℃)以上であり、特に、パイプや装置類の配管系統が広範囲にわたる場合には、パイプの一部、特にボイラーへの戻り管の水温は実際には 200 °F (93 ℃) をはるかに下回るため、水の体積が約30分の1 (3.3 %) 以上に膨張することはほとんどないと考えられます。

この膨張に対処するため、図92のBに示すような膨張タンクを設置する必要があります。

通常、このタンクの下部は配管系の最高点のすぐ上になるように設置し、小さなパイプを介してボイラーの底部またはボイラー近くの戻り管と連通するようにします。

この方法にすれば、循環は妨げられることはなく、あたかも、より高い位置で水と繋がっているかのように、熱水がタンク内へ上がってくる可能性は小さくなります。

この配管系統全体に最初に水を満たすときは、水位が膨張タンクの底をわずかに覆うくらいの高さにするだけで十分です。

膨張タンクに配管系統全体の1/24〜1/30程度の水しか入っていないなら、最大膨張時でも水はタンク上部にまでしか上がってこないでしょう。


表XXVI.— パイプ内の水量

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パイプのサイズ  長さ100フィートあたりのガロン数

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2インチ      13.58 (61.7 ℓ)

3インチ     30.56 (138.9 ℓ)

4インチ      54.33 (246.9 ℓ)

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蒸発が起こり、膨張タンクの水が底を尽きそうになったら新らたな水を補充する必要があります。

適切に燃料を投入するなら、この水の補充量は1日あたりごく少量で済みます。

表XXVIは管径別のパイプ内の水量を示しており、この目安に役に立つでしょう。

特に大規模な施設では、膨張タンクの近くに給水槽を設けると便利ですが、タンク自体に自動給水式のボールバルブを設置することはお推めしませんし、必要でもありません。

なぜなら、特に熱水が​タンク内に上がってきて、必要とする給水量が比較的少ない場合、ボールバルブは故障しやすいからです。

この給水槽と膨張タンクは、配管系の最高点より上に設置する必要がありますが、必要な高さよりもさらに高く設置することは推奨しません。さらに高く設置すると、水頭による圧力が不必要に上昇するからです。1フィートの水頭ごとに、1平方インチあたり433.5MPaの圧力が発生します。

配管系が小規模の場合、またはボイラーの出力が必要量に比べて非常に大きい場合、水がタンク内で沸騰して蒸発が発生し、急速に無駄を生じる危険性があります。

これは適切な燃料投入によって防ぐことができます。

膨張タンクとそれにつながる配管は、凍結の影響を受けないようにする必要もあります。さらに安全性を高めるにはタンクの上部を下部よりもわずかに広く長くすると凍結による破損の危険性が小さくなります。

取水栓はボイラーの最下部に取り付けるか、より便利にするなら、給水槽からボイラーに通じる配管(この配管はボイラーの最下部から入っている場合に限ります)に取り付けます。

(図92参照)

2025年11月2日日曜日

[近況] ”自然に還る”のキッチンガーデン:台北植物園

初めての台湾旅行に行きました。

台北植物園では九州と違う植生の、南国らしい雰囲気を味わうことができました。

昆虫館(こちらは動物園にあり)では、蝶の死骸もそのままで「堆肥に帰るから」と書かれていて、”自然に還る”のコンセプトでした(^^)

10月でも睡蓮が咲いていました。睡蓮の実になったものと花が共存。

そして鳥のさえずりも合わさって、素敵な体験でした。

1920年代のランの温室が現役で使用されていました。
鉄骨ハウスですが、サイズ感に19世紀の名残りを感じます。
日本では戦前の温室を見かけることはまずなさそう。台北で見ることができて感激でした。











2025年10月19日日曜日

19世紀末の園芸施設:40. 様々な暖房方法 III-4 低圧(常圧)温水暖房 −循環を確実にするための水柱圧力と蒸発容器−

はるか昔、大学で水理学を受講したはずなのに、ここで解説されている温水循環に必要な水柱の計算式の根拠がさっぱり思い出せません。しかも華氏とフィート・インチ単位だし。。。😅😅

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様々な暖房方法 Ⅲ 

低圧(常圧)温水暖房


循環を確実にするための水柱圧力等について

温水パイプ内の温度を低下させず維持するには、温水が一定の速度で循環、つまり動いている必要があります。

この動きは、既に説明したように、一方の水柱(ボイラーと接続した流入管内の水)がもう一方の水柱(ボイラーと接続した戻り管内の水)よりも軽くなることによって生じます。

この2つの水柱の重さ(密度)の違いがこの動きを生み出す水頭(圧力)差です。

そのため、様々な条件下で常に熱を供給するために必要な流れを生み出すのに必要最低限の圧力差を把握することが非常に重要です。

(「熱」の項から抜粋した)以下の表が役立ちます。

表XXIIIは、長さ100フィート、外径4インチのパイプが60 °F(16 °C)の空気にさらされた場合に熱循環に必要な最小の流速をパイプの水温別に示しています。

表XXIVから、プロニーの式を用いて流速から水頭差を推定できます。


表XXIII. — 熱循環に必要な温水の流速

表XXVは、異なる温度におけるそれぞれの水柱の高さを示しています。212 °F(100 °C)での水頭差は12インチです。

これらの表を使用するには行きの水温を求めます。戻りの水温は210°F(99 °C)になります。必要な流速については、表XXIIIの3列目を参照してください。

4インチ径のパイプの長さが100フィートでない場合は、パイプの長さに比例して流速を求め、増減します。

次に、表XXIVで、与えられた流速に対応する2列目の数値を読み取ります。これにインチ単位のパイプの長さを掛け、インチ単位のパイプの直径(4インチ)で割ると、必要な水頭(インチ)が得られます。

水頭(圧力を生み出す水柱の垂直の高さ)がわかったら、表XXVの行きの水温に対応する3列目の数値で割ります。その結果が、熱の循環に必要な水頭の最小高さとなります。

長さ 500 フィート、直径 4 インチのパイプで必要な水頭の最小高さを見つけたいとします。このとき、ボイラーから出る水は 210 °F で、ボイラーに戻る水は 190 °F とします。


表XXIV.—パイプ内の水の摩擦


表XXIIIから、100フィートの長さのパイプに必要な流速は'0817(インチ/秒)であり、これに5を掛けると(100フィートと500フィートの比率)、'4085(インチ/秒)となり、これは4インチをわずかに上回る値です。

したがって、表XXIVの2列目を'00119(インチ/秒)と見なし、これに長さを掛け、直径(インチ)で割ると、('00119 x 6000)/4インチ = 1785の水頭となります。

この揚程を表XXVの行きの水温に対応する3列目の数値で割ると、1フィート785インチ/092インチ=19'5となり、必要な柱の高さは19フィート5インチとなります。

パイプの長さは同じ、すなわち500フィート(約150メートル)とし、行きの水温を210 °F、戻りの水温を190 °F ではなく150 °F とした場合は以下のようになります。

100フィート4インチ径のパイプにおける速度は、'0224(インチ/秒) × 5(500フィートなので5倍する)='112インチとなります。

表XXIVによれば、'0001572インチに長さを掛け、直径(インチ)で割ると、水頭は

('0001572 x 6000)/4 = '2358インチとなり、

こ​​れを表XXVに示されている数値'254で割ると、水頭は0.773フィート、つまり1フィート未満となります。

 

表XXV. 異なる温度における水柱の高さ


したがって、長さ 500 フィートの 4 インチ径のパイプにおいて、水が 210 °F で送り出され、190 °F で戻る場合、最低点の流入口からパイプの上部までの上昇の合計は最低 19フィート5インチ 必要であることがわかります。;一方、同じ長さのパイプで、水が 210 °F で送り出され、150 °F で戻る場合の上昇はわずか 1フィート 0インチ で済みます。

このように、行きと戻りの水​​温差が大きいほど、ボイラーからパイプ上部までの間に必要な温度上昇は小さくなり、加熱ができるパイプ長さは長くなります。

また、水柱の鉛直高さ(水頭差)が高いほど、パイプを長くすることができ、水の循環も容易になります。

これら2つの点を合わせると、行きと戻りの水​​温度差が大きく、水柱が高いほど、全体の循環が容易になり、ボイラーでの必要な燃焼量とそれに伴う燃料の無駄な使いが減り、より大きな放熱面積で加熱できることがわかります。

これまでの計算はすべて4インチ径のパイプについてでした。径が2インチや3インチのパイプでは計算が異なりますが、園芸施設では2〜3インチのパイプは放熱用に使用されることはほとんどないため、ここでは説明しません。

パイプに狭窄部や曲がりがあるとそこで摩擦損失が発生するため、できるだけ避けるべきです。

実現可能なら、循環を促進し摩擦損失を減らすために、放熱パイプは9フィートに付き1/2インチの傾きをつけるべきでしょう。

しかし、多くの場合、パイプをこの傾きにすることは不可能であり、場合によっては完全な水平にせざるをえないことがあります。

これは残念なことですが、流れはそれほど速くないものの、それでも熱を回復させ循環を生じさせるのは十分です。

この場合、ボイラーを設置する深さに大きく左右されます。


蒸発容器

温水パイプ内の水分の蒸発速度は、大気中に存在する水分量、露出面、蒸発させる水の温度、そして周囲の空気が静止しているか動いているかによって決まります。

したがって、大容量のタンクを用意するよりも、パイプ上に蒸発容器を設けてそこに少量の水を入れる方が有利であることは明らかです。

後者(蒸発容器)の方が、タンクよりも蒸発をうまくコントロールできます。

このような蒸発容器は、放熱パイプに鋳込んで作った垂直フランジ、またはパイプにフィットするように底部が凹面になっている亜鉛製の容器が利用できます。(「促成栽培ベッド」および「湿度計」の項を参照のこと。)

2025年10月5日日曜日

19世紀末の園芸施設:40. 様々な暖房方法 III-3 低圧(常圧)温水暖房 −底面加熱、パイプの配置−

温水暖房についてまだまだ続きます。「底面からの加熱」と「パイプの配置」に関するの部分です。

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低圧(常圧)温水暖房


底面加熱用パイプの本数

栽培用のボーダーやベッドにパイプを置く場合は、大気への放射面がパイプ全面とはならない(下半分は地面に接する)ので、大気への放射面がパイプの全面となるこれまでの計算方法は底面加熱用パイプには適用できません。

メロン、キュウリ、パイナップルなどの通常栽培では、表XXIIに示すように、ベッド幅1フィートあたり約9インチの放射面積があれば十分であることが経験的に分かっています。

表 XXII. 底面加熱に必要なパイプ

パイプの位置

加温が効果的に行えるかどうかは、パイプ放射面の位置に大きく左右されます。

熱放射が集中して過度の高強度域ができるのを防ぐため、温水パイプは可能な限り分散して配置する必要があります。

また、パイプは空気の対流を促進し、暖気が届かない滞留域ができないないように配置する必要があります。さらに、外部から流入した空気が群落に到達する前にパイプの影響を受けて温められるようにパイプを配置するのが望ましいです。

片流れ屋根のハウスで、パイプが背面の壁にのみ配置されている場合、パイプのすぐ近くの温められた空気塊は上昇し、その場所はすぐに冷気と置き換わるため、特に棟近くの上部換気口が開いている場合、背面壁付近の空気塊は動きますが、屋根に沿った空気塊はその影響を受けず、温められない可能性があります。

少なくとも何本かのパイプは、温室の平面図で見て屋根が立ち上がる地点、つまり屋根の最も低い位置(軒)付近の地面またはその近くに設置する必要があります。

たとえパイプの設置がこの位置だけだとしても、ここで温められた空気塊は温室の最も高い部分まで上昇するので、上昇する過程で屋根全体を横断することになります。これはある種の温室にとってはまさに必要な効果です。

換気の流入口は一般的に前面の壁、つまり屋根の最も低い部分付近にあるため、そのこともパイプをこの位置に設置する理由になります。

さらに、空気が加熱されないまま群落に到達するのを防ぐため、前面のパイプを地面近くに設置する場合は、「換気」の項で説明したように、パイプのすぐ後ろの壁内に換気口を設置することをお勧めします。

パイプは屋根の最も低い部分の近くに設置するのが望ましいですが、既に述べた理由により、特に幅が広く断面積の大きい片流れ屋根のハウスでは、パイプの一部はハウス内の屋根面に配置する必要があります。

他の条件が同じであれば、パイプは地面の上か地面近くに設置することが望ましい。高い位置に設置すると、パイプ上部の空気塊のみが加熱され、下部の空気層が部分的に加熱されない可能性があるからです。

パイプの位置については、個々のケースを個別に判断する必要があるため、厳密な基準を定めることはできません。

ただし、一般的な観点から言えば、

非常に幅の狭い傾斜屋根のブドウハウスや植物栽培ハウスでは、パイプは前面のみに設置してもよいでしょう(必要であれば、それに妻面を加えて設置してもよいでしょう)。

幅が中程度または広いブドウハウスでは、一部のパイプを前面に、一部を通路に隣接した内側の栽培ボーダーの奥に設置してもよいでしょう。

これらの位置にうまく配管できたうえに、さらに配管したい場合は、ハウスがあまり長くない場合は、余剰配管を縦方向ではなく、ハウス内の端に沿って横方向に、つまり背面壁に沿って設置する方がよいでしょう。

ブドウハウスではパイプがブドウの茎に近づきすぎないように注意する必要があります。

中程度または広い幅の片流れ栽培ハウスで、ステージが設置されている場合、一部のパイプは前面または前面と両妻面に設置し、その他のパイプは必要に応じて、後面ステージの前面または下側の通路付近に設置します。

ある程度の規模の両屋根型のブドウハウスでは、両側面に沿って、また片側または両側にある中央通路の端に沿ってもパイプを設置することができます。必要に応じて、さらに妻面部にもパイプを設置することができます。

側面と中央ステージのある両屋根型の栽培ハウスでは、パイプは外壁に沿った両側面に沿って設置し、必要に応じて中央ステージの下や周囲にも配置することができます。

ハウスの長さによって、縦方向のみに配管するか、横方向にも配管するかが決まります。

ハウスの長さが幅に対して長ければ長いほど、妻面に配管する必要性は低くなります。

また、どんなハウスでも妻面が外気に晒されておらず、他のハウスとの仕切りによって繋がっている場合は妻面に配管する必要性は低くなります。

ガラスは外気に晒されている方が冷却されやすくなります。

また、両屋根ハウスが南北棟の場合、あるいは片流れ屋根のハウスが東または西向きの場合、当然のことながら、北向きのガラスの妻面は横方向に配管して加熱する必要性が高まります。

1連の配管の列数に制限はありません。

2列、3列、4列、あるいは6列の配管が必要になる場合もあります。

2 列または 3 列の場合、パイプは通常このように垂直に配置され、各列が結合する両端にサイフォンが設けられます。

図. 93

4列または6列の場合は:

図. 94

各系統を連結して半分を流入管、半分を戻り管とする代わりに、通常は流入管の数を戻り管の数より多くして連結します。

放熱管は、本管から立ち上げたら決して垂れ下がらせてはいけません。

ドアへの通路が複数あり、本管から立ち上げてドアへの通路間の空間に新しく配管を設置するのが不便な場合は、放熱管を地表より下に溝にを切って設置しますが、埋め戻してはいけません。溝が通路と交差する箇所では格子で覆うようにします。

このようなケースは、コンサバトリーや植物ハウスでのみ発生する可能性があり、ブドウハウス、特に内部に栽培ボーダーがある場合はほとんど発生しません。

上記したとおり、このように設置されたパイプは、加熱能力が約30%低下します。

熱の放射が抑制されるだけでなく、パイプが完全に空中に露出している場合ほど対流が効率的に行われません。もちろん、外気の流れがパイプ上を通過するように、ハウス内への外気の取り込み方法が適切に行われている必要がありますが。

水はできるだけ早く、そしてできるだけ容易に放射パイプの最高点まで上昇させなければなりません。

そうすれば、水が途中で冷えるきっかけや時間が少なくなり、上昇する水と下降する水の比重差が大きくなり、循環がより効率的に進行します。



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