ここでも雨水処理や湿気、滴下に対する注意が述べられています。雨どいは、現代では金属製か樹脂製か、の選択になると思うのですが、19世紀は木製も有望だったんですね。19世紀なら、すっかり金属製になっているかと思ってました。
HORTICULTURAL BUILDINGS. By F. A. FAWKES. (1881)
施工に関する雑記
この項では、他の項では触れていない施工上の詳細についていくつか説明します。
雨どい
雨どいには、鋳鉄ではなく亜鉛メッキ鋼板が使用されることがあります。
亜鉛メッキ製でもコストの削減効果は大きくありませんし、亜鉛メッキ製はたわみやすく、そこに梯子をかけることはできません。
軒板に十分な大きさがあれば、木製の雨どいを付けることができます。
木製の雨どいは、厚みがあるので木骨ハウスの他の木材部分と同等あるいはそれ以上に長持ちします。そのため、必ずしも金属材料で内張りする必要はありません。
しかし、施工者によっては木製雨どいに内張りするのを好む人もいます。その場合は木材と内張りの間に湿気が溜まらないように注意しなければなりません。
通常、屋根と側面の壁の接合部で屋根面の外縁は側壁と同じ面を形成します。そのため、屋根面外縁のプレート面に雨どいを固定すれば側壁から張り出すことになります。
側壁上にプレートを設置してそこに雨樋を固定し、雨どいの外縁が壁面からはみ出さないようにする場合もあります。
屋根の外縁に雨樋を固定する方が良いのですが、雨どいが境界となる壁からはみ出ないことが望ましい場合には雨どいを壁上に設けます(「法律」の項を参照)。
雨どいは、可能なら10フィートあたり約1インチの勾配(1/12勾配)にすべきです。しかし、常にそうできるとは限りません。勾配が平坦になるほど、縦樋の間隔は広くなります。
ハウスの谷樋はできるだけ、そばの住宅のレンガ壁に接しないようにします。
ハウスの屋根が住宅の壁に向かってどうしても下向きに傾斜せざるをえない場合、谷樋は幅広の鉛板でしっかりと雨押さえを施すとともに、その下を人が容易に歩行でき、雪、葉、その他、排水の邪魔になる物を清掃できる幅をとるべきです。
縦樋は、パイプや樋が葉などで詰まらないようにするため、パネル格子を通して排水するようにします。
部材の寸法
部材の寸法は大きすぎてもいけません。大きすぎると、太陽光を遮ったり、大気の作用を受ける面積が広くなり、反ったり、たわんだり、虫が入り込む隙間ができたり、腐りやすくなったりします。
屋根
屋根はしっかりと「結束」して壁や側面の窓に横方向の力が加わらないようにする必要があります。すべての応力が分散され、垂直方向以外の圧力がかからないようにしなければなりません。
筆者はこれまで直線形状の屋根や曲線形状の屋根のハウスを見てきましたが、そういったハウスでは斜めの木製支柱(ブレース、筋交)を必ずハウスを支えている壁の外面に着けて固定すべきとされてきました。そうしないと、レンガ造りの壁に一方的に力がかかってレンガ壁が不等沈下するでしょう。
屋根の換気口部分はハウスの他の部分と同様、閉じているとき、部分的あるいは完全に開いているときも、蝶番の部分から雨水が流れ込まない構造にする必要があります。
引き戸の桟(サッシバー)と垂木は最も滴下が生じにくい部分になるようにして、屋根を支える木材板は結露水が付着しないよう、上面を面取りする必要があります。
調度・備品類
ハウスの調度や備品類はすべて、しっかりとした耐久性のあるものでなければいけません。入手可能でも最安値の錠前、蝶番、歯車、開き戸、ドアハンドル、掛け金、紐などを使用するのは間違った節約方法です。
温室特有の厳しい空気環境にさらされてから2週間も経たないうちに錆びて役に立たなくなるような安物のリムロック(表面に着けるタイプの錠)よりも、数シリング余分に出して良質の真鍮製のほぞ穴錠を購入する方がどんな場合も有益です。
換気の吸排気口などの蝶番は、常に湿気にさらされるため、鉄製ではなく真鍮製にすべきです。
施工のポイントは本書の各所でも直接的または間接的に必要に応じて言及しています。